専門家に学ぶ 投資信託実践編

第4回 目的に合ったファンドを選ぶ

講師:元 日本証券経済研究所 特任リサーチ・フェロー 杉田 浩治 氏

ファンドの選び方」についてはインターネット、新聞・雑誌、書籍などに多く紹介されています。曰く"過去の実績をチェックする""運用会社を選ぶ""コストを調べる"など、たくさんの情報があふれています。しかし、個別のファンド選びに入る前に重要なことは「購入目的をはっきりさせ、その目的にあったタイプのファンドを選ぶ」ことです。

あなたの投信購入目的は何ですか?

①老後に備えるなど「長期的に資産を増やす」ことが目的でしょうか。
②現在の収入を補充するため「安定した分配金を得たい」のでしょうか。
③取りあえず「余裕資金を運用したい」のでしょうか。

これらの目的によって、次に述べるように保有期間のめどが決まり、それに適したファンドのタイプが決まってきます。購入目的・資金性格をはっきりさせることは資産運用の効率性を高めるためにとても重要です。

目的に適したファンドのタイプ

上記の目的別に、それぞれ適したタイプの例を挙げてみましょう。
①の目的の場合、保有期間が10年~20年など長期となり、途中で分配金を受け取る必要はないので、株式投信が適当でしょう。なぜなら株式は、定期収入(配当金)は不確定で短期的には値下がりもあるものの、長期的には企業収益の成長等による値上がり益を期待できるため、長期総合収益が平均して預金・債券より大きくなるからです。
アメリカの確定拠出年金(退職後にそなえる勤労者積み立て制度のことで「401k」などと呼ばれます)に加入している人々の多くは、数十年単位で株式投信に毎月積み立て投資を行っています。
②の場合は分配金が重要なので、利子・配当など定期収入が多く見込める債券や高利回り株などで運用され、分配金額や分配回数が多く(毎月分配型、隔月分配型など)、値動きが比較的安定しているタイプが適当でしょう。このタイプについては、1990年代後半以降の日本の超低金利のもとで、日本より利子の高い海外債券等に投資するファンドが増えていることはご承知のとおりです。
そして③の場合には、いつ引き出すか分からないお金なので、短期証券等で運用され、換金性・安全性に優れているタイプが適しているといえます(証券会社に総合口座を持っている投資家の口座内の余裕資金は通常、安全性の高いマネー・リザーブ・ファンドMRFにより運用されています)。
以上をまとめると下表のようになります。

購入目的と適合ファンドのタイプ(例)
購入目的 保有期間 適したファンドのタイプ
主たる運用対象 分配の金額・回数 値上がりの期待
老後に備えるなど資産を増やしたい 長期 株式 少ない 大きい
分配金が欲しい 中長期 債券・高利回り 多い 小さい
一時的余裕金運用 短期 短期証券など 預金+αの分配 なし
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