2022年4月から高校の家庭科・公共の授業の中で「資産形成」の視点にも触れられることになりました。
これは「資産形成」が、私たちの生活の中で重要になってきている。
そして、大切なお金を低金利の預貯金に眠らせるのではなく、元手として積極的に運用する「資産運用」が必要になってきたということです。
では、どうして?
早いうちから「資産形成」や「資産運用」のことを学ぶことが求められているのでしょうか。
その背景を理解するために、時代を遡って一緒に考えていきましょう。
貯蓄でお金が殖えた時代
学生の皆さんはお年玉をもらったら、どのように使っていますか?
ゲームやマンガ、洋服など、欲しいものはたくさんあるけれど、「無駄遣いしないで貯金しなさい!」と親に言われ、銀行や郵便局に預けていた人も多いはず。
金融の世界で「貯蓄」と呼ばれるこうしたお金は、かつては高い金利のおかげで「ただ預けているだけ」で殖えていきました。
高度経済成長期を迎え、日本が先進国へと駆け上がっていたころの話です。
超低金利時代を迎えて
その後も日本経済は順調に成長を続け、1989年末には日経平均株価が最高値(38,915円87銭)を記録。
まさしく、順風満帆な経済情勢だったといえるでしょう。
ところが90年代に、状況は一転。
バブル経済が崩壊し、華やかなりし時代は息をひそめてしまいます。
地価や住宅価格の急落などにより不良債権が拡大し、大手金融機関も相次いで破綻に追い込まれてしまいました。戦後初のマイナス成長を余儀なくされ、日本銀行はゼロ金利政策を敢行。
以後、低金利時代の幕開けとともに、銀行や郵便局に「ただお金を預けているだけ」では、貯金はなかなか殖えなくなってしまいました。
漠然とした将来への不安……
自分の「将来」を、自分で考える時代へ
これまで見てきたように、低金利時代で貯金だけではお金が殖えない。長い老後の生活を年金にだけ頼るのも不安・・・。
そんな時代に私達は生きているようです。
そんな時代でも、人生を歩んでいけば、例えば、結婚、子供の誕生、住宅の購入、子供の教育、老後、...といったお金のかかるイベントが待ち受けています。
具体的にこれらのイベントにはどのくらいお金がかかるのでしょうか?
たとえば、婚約・結納から新婚旅行までにかかる「結婚費用」の平均は494万円、幼稚園~大学まで「子ども1人にかかる学習費」は、すべて国公立に通った場合で1000万円程度・すべて私立に通った場合で2500万円程度、「夫婦2人がゆとりあるセカンドライフを送るために必要な生活費」の平均は月額約36万円......といった調査結果があります。
ライフイベントにかかるお金の一例
ライフイベントと費用項目 | 必要なお金の平均額 | |
---|---|---|
▼結婚 婚約・結納から新婚旅行まで (首都圏平均) |
約494万円 | ※1 |
▼子どもの教育 | ※2 | |
幼稚園の学習費(年額) | 公立で約22万4千円、私立で約52万8千円 | |
小学校の学習費(年額) | 公立で約32万1千円、私立で約159万9千円 | |
中学校の学習費(年額) | 公立で約48万8千円、私立で約140万6千円 | |
高校の学習費(年額) | 公立で約45万7千円、私立で約97万円 | |
大学の学習費(年額) | 国公立で約115万円、 私立(文系・理系平均)で約172万円 |
※3 |
▼住宅の購入 物件別の平均購入価格 (いずれも新築) |
土地付注文住宅では約4397万円 建売住宅では約3495万円 マンションでは約4545万円 |
※4 |
▼セカンドライフの生活費 夫婦2人の日常生活費(月額) |
最低限必要だと思う費用は約22万円 ゆとりある生活に必要な費用は約36万円 |
※5 |
※1 出所:リクルート結婚情報誌ゼクシィ「結婚トレンド調査2020」
※2 出所:文部科学省 平成30年度「子供の学習費調査」
※3 出所:日本政策金融公庫 令和2年度「教育費負担の実態調査(勤務者世帯)」
※4 出所:住宅金融支援機構 令和2年度「フラット35利用者調査」
※5 出所:生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」
このような時代だからこそ「いつ頃に、どんなイベントが待ち構えているのか?」「そのイベントにはどのくらいの費用がかかって、どうしたらその費用を作ることができるのか?」を早いうちから考えて、それに備えてお金を作っていく「資産形成」の必要性が増してきているといえそうです。
ここで大切なのは、お金を預貯金に眠らせたままにしておくのではなく、そのお金を元手にしてお金を増やす「資産運用」の考え方です。いわば、自分のお金にも働いてもらおうということです。