未来の「投資による資産形成」について、あなたの若い発想で考えてみませんか?
優秀賞につきましては論文本文をダウンロードいただけます。
鍋島 萌花さん(広島大学大学院)
「双曲割引が老後の貯蓄に与える影響」
【審査講評】 双曲割引と貯蓄額の関係に着目した点はオリジナリティがあり、論点が明確で、関連した先行研究を的確にサーベイした上で必要なプロセスを経た検証や、統計的に適切な分析がなされたことを高く評価します。ライフプランニングにおいては、短期でも10年を意識する必要があると思われるなか、長期的な視点を持つ動機づけになり、優れた論文として優秀賞を授与し作品を公表いたします。
ただし、双曲割引と貯蓄額の、相関と因果については、より考察が必要であったと思われます。双曲割引がなぜ2,000万円及び1億円以上の貯蓄額に対して統計的に有意な負の影響を与えているのかの考察や、近視眼性がほぼすべての金額帯で有意であること、双曲割引が変わらない強い仮定についても、深い考察が必要であったと思われます。
また、行動ファイナンスの要素と投資教育の関連を分析した点を高く評価する一方、65歳以上を調査対象にしているものの、義務教育段階での金融教育が必要であるとの提言には、やや飛躍が見られました。さらに、原則として60歳まで引き出せないiDeCoの活用に係る提言に照らせば、その利用者は調査対象の層とは異なることから、提言の弱さが否めませんでした。それらの観点から最優秀賞には至りませんでした。
現実的な課題であるiDeCo等の利用促進について具体的な提言があれば、より説得力が高まり、社会的に有意義な論文になり得ると思われます。筆者の将来性を期待いたします。
「区間AHPに基づく制約付き平均・分散モデル」
【審査講評】 市場価値モデルに定性情報を組み込む試みはとても独創的でした。ポートフォリオ構築は、平均分散アプローチ(期待リターンとリスクの2つの指標から構築する)で行うことが一般的であるところ、各人の目標を組み込む考えはオリジナリティが高く、佳作を授与いたします。
AHPでポートフォリオを組む際は、AHPの階層構造図を使った上でどの投資対象にどれだけ投資をするか、投資ウェイトを決めるのが標準的モデルであり、それについて区間AHPを活用した分析は良いアイデアでした。AHPを活用した最適化が広く活用されていないなか、具体的な最適化の手順まで表した点は高く評価いたしました。
一方で、AHPに関するその有用性の示唆やパラメーターの設定、またインフレヘッジのデータ設定について、経済合理性の点で納得性に欠けていると思われる点が見られました。経済合理性が欠けている分析は単なる計算結果となってしまうため、意味ある結果を導くためにも、より前提条件の設定に注意を払うべきでした。また、より丁寧な説明のもとでの考察が望まれました。
AHPは多基準意思決定法であり、様々な基準を考慮した上で何らかの意思決定を行う必要があり、その点、実務の応用においては、効率的フロンティアのタイプ別表示に留まらず、具体策の提言の必要があると思われます。
本作は、個人の様々な定性情報やニーズを取り込める余地があり、発展性、応用性が高いと考えられます。筆者が今後の課題としている通り、区間一対比較行列の作成方法の妥当性について展開し、さらに運用モデルとしての価値を評価のうえ、実務へ貢献する点の考察を期待いたします。
大原 奏那さん(同志社大学)、斎藤 大士朗さん(同志社大学)
「ベーシックアカウントを通じて脱投資後進国を実現~若年期から自律的に資産形成するための理想の金融教育~」
【審査講評】 自ら高校生と大学生にアンケート調査を行い、認知バイアスに注目し、行動変容モデルから自律的な資産形成のための金融教育に結び付けた分析の独自性を評価し、敢闘賞を授与いたします。
ステージモデルの各ステージに関連した認知バイアスを当てはめ、それらについてのナッジをベースとするソリューションを提示している点を評価いたします。
ただし、ベーシックアカウントへの導きには飛躍が否めませんでした。ベーシックアカウントはシンクタンクから提言された既存のアイデアであり、その実現性が課題とされていると思われます。結論として、なぜベーシックアカウントを導入すべきかについて、深い考察を望みます。
また、高校生と大学生に限定した調査結果から、日本人全体の投資行動を結論づける点においても飛躍があるでしょう。投資機会や資金が限られる高校生をナッジの研究対象とした適切性にも疑問が残りました。
ロジスティック回帰と通常の回帰分析の両方の分析を行った点は評価できる一方、認知バイアスと投資行動の関係に留まらず、属性などのコントロール変数からの寄与に関する考察が加われば、より付加価値の高い論文になり得るでしょう。考察力のさらなる向上を期待いたします。
「大学生の金融リテラシーと心理的動機に関する実証分析」
【審査講評】 近年の政策で推進されている金融経済教育において、見落とされているとも言える大学生向けの金融経済教育にフォーカスした着眼点は独自性があり、アイデア賞を授与いたします。
独自に大学生を対象としたアンケート調査を行い、大学生の金融リテラシーと心理的因子との関連を研究した点を評価いたします。心理的動機によるスクリーニングによる金融教育等は、実態の理解に基づいた提言でありました。
ただし、アンケート内容の記述が少なく、また、サンプル数に照らした属性分類の適切性や、質問内容と順序ロジスティック回帰分析の説明変数のつながりの記載がないことには、改善の余地が残ると思われました。
また、提言にある、経済への関心の高い学生には経済を中心にした教材を提供し、計画性を重視する学生には計画に視座を据えた教材を提供する点は、強みを持つところを更に強くすることにとどまり、金融リテラシーの全般的な向上、ひいてはフィナンシャル・ウェルネスの向上の観点では、欠落している知識を身に付けることには寄与するところが小さいとも言えます。教材の提供にとどまらない属性ごとにカスタマイズした提言が望まれました。
大学生というセグメントに限りながらも、目的、結果、応用について、論理的な破綻なく、スムーズな主張がなされていました。筆者が着眼点の幅を広げるとともに、さらなる分析力の向上を大いに期待いたします。
(以下、2024年募集要項)
また、資産運用業改革の機運が高まっています。
これらは、計画的な生活設計や長期的な資産形成が、私たちの生活の中で重要になってきていることの表れです。
経済成長や賃金等に対する不安に包まれる時代を生きる若い方々、将来の日本を担う方々に、投資をより身近なものとして捉え、今後の「投資による資産形成」の在り方について論文・レポート執筆により考えていただくことを期待します。
審査結果発表 : 11月20日(水)予定
表彰式 : 12月18日(水)16:00~ @東証Arrows
※2024.9.23(月)時点で上記条件を満たす方であれば、学部・学科・専攻は不問
※社会人経験者、海外在住者は除く
※ゼミの課題等として、グループ単位で応募いただくことも可能。ただし、グループ全員が参加資格を有していることが必要
※12月18日(水) 16:00~、東証Arrows(東京都中央区)で開催される表彰式に参加できる方(交通費・宿泊費補助あり)
・若年層のライフプランニングの考え方
・人生100年時代に相応しい資産形成の考え方やNISA等制度の利用
・若年層の資産形成支援のための制度
・資産所得倍増のためのNISA制度の活用
・資産形成の経済・収入シナリオ別分析
・多様なライフスタイルにおける資産形成支援のための制度
・資産形成の数理モデル
・資産形成のために金融機関に期待すること
・学校や家庭における理想の金融教育
・理想の投資信託
・資産形成促進のための法や規制に関する分析
・データサイエンスと資産形成
その他、資産形成に関することについて硬軟幅広く自由な発想による論文・レポートを募集します。
参考レポートとしてこちらをご参照ください。
・データ等を適切に利用、引用していること
・テーマに即した分析、提言をしていること
・資産形成、資産運用に関して考察していること
優秀賞(2編) : 賞金各10万円
佳作(2編) : 賞金各5万円
東証Arrowsでの表彰式および審査員をはじめとする関係有識者との懇親会にご招待します。
表紙(応募用紙):ダウンロード
応募フォーム:https://app.japandesign.ne.jp/input/jita_award2024
・日本語又は英語で書かれた論文で図表を含め1ファイルとする
・A4用紙、縦向き、横書き、游明朝
・5ページ~20ページ(表紙、図表等を含む)
・ファイル形式はPDFファイルのみ(10MB以内)
・右下にページ数を記入(本文から)
※表紙と作品を一体のPDFファイルとする
※指定の表紙(応募用紙)を特設サイトよりダウンロードすること
※提出作品内に「氏名」「学校名」等の個人情報を記載しないこと
沼田 優子 (明治大学)
枇々木 規雄 (慶應義塾大学)
☆大庭 昭彦 (野村證券 金融工学研究センター)
神山 哲也 (野村資本市場研究所)
後藤 順一郎 (アライアンス・バーンスタイン)
佐川 あぐり (大和総研)
前山 裕亮 (ニッセイ基礎研究所)
応募者がこの募集要項の規定に違反した場合には、応募者への事前通知なく失格処分とし、受賞者発表後においては受賞を取り消す場合があることについて、予め同意いただきます。
以下の行為を禁止行為とします。
■論文の内容について、第三者の著作権、プライバシー権、その他一切の権利を侵害する行為
■なりすましなど、自身の氏名、所属校、所属ゼミ等を偽る行為
■本アワードに関連し、他者に対する誹謗中傷、差別的言動、名誉毀損を行う行為
・受賞作品を含めたすべての応募作品の著作権、意匠、特許、実用新案、商標等に関する全ての知的財産は応募者に帰属します。そのためこれを保護する責任は応募者本人となります。
・ただし、主催者である一般社団法人投資信託協会およびその指定した第三者は、受賞作品の全部または一部(要約を含む)を、印刷物・出版・展示・Web等で使用できるものとし、受賞者は著作者人格権を行使しないことに同意いただきます。
・応募者は、受賞作品が発表されるまでの間、応募いただいた論文を、学外に発表(他のアワード、コンテスト等への応募、Webサイト、SNS等での発表を含む)してはならないものとします。
・応募作品のファイルは返却いたしません。別途の活用を予定されている場合には、必ずファイルのコピーを作成し保管してください。
・応募作品は応募者自身のオリジナルで国内外未発表のものに限ります。
・応募作品の制作費用および応募に係る費用は、応募者の負担とします。
・他のアワード、コンテスト等への二重応募は認められません。
・著作権およびその他の知的財産権を含む第三者の権利を侵害するおそれのある場合は、応募者の責任において必要な許可を得た上で、その旨を提出時に申し出てください。第三者の著作物等を利用して応募された場合には、応募者自身の責任と負担において許諾に必要な権利処理がなされている必要があります。
・個人または法人に対する名誉毀損および侮辱にあたる作品、ならびに公序良俗に反する作品等は応募できません。
・万一、第三者からの権利侵害などの提訴、その他の争いが生じた場合、主催者は応募者に対し、発生した損害の賠償を求め、応募者ご自身の費用と責任において対応していただくこととなります。
・応募者は、審査の結果については、異議を主張することができないものとし、主催者は、その理由について一切開示義務を負いません。
・応募者に反社会的勢力の活動を助長する行為が判明した場合、審査の対象外となります。受賞発表後に判明した場合であっても、受賞は催告なしに取り消されます。また、その場合応募者に生ずる損害についての賠償は一切行われません。
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