
未来の「投資による資産形成」について、あなたの若い発想で考えてみませんか?
初回開催となった昨年度アワードでは、幅広い学部の学生の皆さんから自由な発想による論文・レポートをご応募いただきました。物理学専攻のあなた、哲学専攻のあなたにとっても資産形成は今後必要となってくる事柄です。皆さんの日頃の学び、考えを本アワードにぶつけてみませんか?論文に昇華させてみませんか?
資産形成学生論文アワード2024(第2回)結果
資産形成学生論文アワード2024受賞者、論文名及び各論文への審査講評を公表いたします。優秀賞につきましては論文本文をダウンロードいただけます。
最 優 秀 賞
該当なし優 秀 賞
和泉 晴香さん(広島大学)、姫野 柚葉さん(広島大学)鍋島 萌花さん(広島大学大学院)
「双曲割引が老後の貯蓄に与える影響」
【審査講評】 双曲割引と貯蓄額の関係に着目した点はオリジナリティがあり、論点が明確で、関連した先行研究を的確にサーベイした上で必要なプロセスを経た検証や、統計的に適切な分析がなされたことを高く評価します。ライフプランニングにおいては、短期でも10年を意識する必要があると思われるなか、長期的な視点を持つ動機づけになり、優れた論文として優秀賞を授与し作品を公表いたします。
ただし、双曲割引と貯蓄額の、相関と因果については、より考察が必要であったと思われます。双曲割引がなぜ2,000万円及び1億円以上の貯蓄額に対して統計的に有意な負の影響を与えているのかの考察や、近視眼性がほぼすべての金額帯で有意であること、双曲割引が変わらない強い仮定についても、深い考察が必要であったと思われます。
また、行動ファイナンスの要素と投資教育の関連を分析した点を高く評価する一方、65歳以上を調査対象にしているものの、義務教育段階での金融教育が必要であるとの提言には、やや飛躍が見られました。さらに、原則として60歳まで引き出せないiDeCoの活用に係る提言に照らせば、その利用者は調査対象の層とは異なることから、提言の弱さが否めませんでした。それらの観点から最優秀賞には至りませんでした。
現実的な課題であるiDeCo等の利用促進について具体的な提言があれば、より説得力が高まり、社会的に有意義な論文になり得ると思われます。筆者の将来性を期待いたします。
佳 作
比留木 幹人さん(京都大学)「区間AHPに基づく制約付き平均・分散モデル」
【審査講評】 市場価値モデルに定性情報を組み込む試みはとても独創的でした。ポートフォリオ構築は、平均分散アプローチ(期待リターンとリスクの2つの指標から構築する)で行うことが一般的であるところ、各人の目標を組み込む考えはオリジナリティが高く、佳作を授与いたします。
AHPでポートフォリオを組む際は、AHPの階層構造図を使った上でどの投資対象にどれだけ投資をするか、投資ウェイトを決めるのが標準的モデルであり、それについて区間AHPを活用した分析は良いアイデアでした。AHPを活用した最適化が広く活用されていないなか、具体的な最適化の手順まで表した点は高く評価いたしました。
一方で、AHPに関するその有用性の示唆やパラメーターの設定、またインフレヘッジのデータ設定について、経済合理性の点で納得性に欠けていると思われる点が見られました。経済合理性が欠けている分析は単なる計算結果となってしまうため、意味ある結果を導くためにも、より前提条件の設定に注意を払うべきでした。また、より丁寧な説明のもとでの考察が望まれました。
AHPは多基準意思決定法であり、様々な基準を考慮した上で何らかの意思決定を行う必要があり、その点、実務の応用においては、効率的フロンティアのタイプ別表示に留まらず、具体策の提言の必要があると思われます。
本作は、個人の様々な定性情報やニーズを取り込める余地があり、発展性、応用性が高いと考えられます。筆者が今後の課題としている通り、区間一対比較行列の作成方法の妥当性について展開し、さらに運用モデルとしての価値を評価のうえ、実務へ貢献する点の考察を期待いたします。
敢 闘 賞
高塚 きららさん(同志社大学)、森永 俊栄さん(同志社大学)大原 奏那さん(同志社大学)、斎藤 大士朗さん(同志社大学)
「ベーシックアカウントを通じて脱投資後進国を実現~若年期から自律的に資産形成するための理想の金融教育~」
【審査講評】 自ら高校生と大学生にアンケート調査を行い、認知バイアスに注目し、行動変容モデルから自律的な資産形成のための金融教育に結び付けた分析の独自性を評価し、敢闘賞を授与いたします。
ステージモデルの各ステージに関連した認知バイアスを当てはめ、それらについてのナッジをベースとするソリューションを提示している点を評価いたします。
ただし、ベーシックアカウントへの導きには飛躍が否めませんでした。ベーシックアカウントはシンクタンクから提言された既存のアイデアであり、その実現性が課題とされていると思われます。結論として、なぜベーシックアカウントを導入すべきかについて、深い考察を望みます。
また、高校生と大学生に限定した調査結果から、日本人全体の投資行動を結論づける点においても飛躍があるでしょう。投資機会や資金が限られる高校生をナッジの研究対象とした適切性にも疑問が残りました。
ロジスティック回帰と通常の回帰分析の両方の分析を行った点は評価できる一方、認知バイアスと投資行動の関係に留まらず、属性などのコントロール変数からの寄与に関する考察が加われば、より付加価値の高い論文になり得るでしょう。考察力のさらなる向上を期待いたします。
アイデア賞
出田 隼也さん(中央大学)「大学生の金融リテラシーと心理的動機に関する実証分析」
【審査講評】 近年の政策で推進されている金融経済教育において、見落とされているとも言える大学生向けの金融経済教育にフォーカスした着眼点は独自性があり、アイデア賞を授与いたします。
独自に大学生を対象としたアンケート調査を行い、大学生の金融リテラシーと心理的因子との関連を研究した点を評価いたします。心理的動機によるスクリーニングによる金融教育等は、実態の理解に基づいた提言でありました。
ただし、アンケート内容の記述が少なく、また、サンプル数に照らした属性分類の適切性や、質問内容と順序ロジスティック回帰分析の説明変数のつながりの記載がないことには、改善の余地が残ると思われました。
また、提言にある、経済への関心の高い学生には経済を中心にした教材を提供し、計画性を重視する学生には計画に視座を据えた教材を提供する点は、強みを持つところを更に強くすることにとどまり、金融リテラシーの全般的な向上、ひいてはフィナンシャル・ウェルネスの向上の観点では、欠落している知識を身に付けることには寄与するところが小さいとも言えます。教材の提供にとどまらない属性ごとにカスタマイズした提言が望まれました。
大学生というセグメントに限りながらも、目的、結果、応用について、論理的な破綻なく、スムーズな主張がなされていました。筆者が着眼点の幅を広げるとともに、さらなる分析力の向上を大いに期待いたします。
募集要項(現在募集は終了しております)
# 資産形成 論文
# JITA Research Award