つみけんサイト(すべての人に世界の成長を届ける研究会)

資産形成学生論文アワード2023 表彰式

 2023年12月20日(水)に資産形成学生論文アワード2023表彰式を東証Arrowsにおいて挙行しました。アワード受賞者、審査員、後援者、事務局(投資信託協会)など約25人が参加しました。

                前列:会長、受賞者  後列:審査員

 表彰式においてはまず、松下会長より概要以下の祝辞がありました。

≪松下会長 祝辞≫
 日本でもようやく金融教育が高校で必修となり、計画的で長期的な資産形成が益々重要となっていく中、政府も新しいNISA制度の拡充を含め、資産運用立国実現に向けたプランを実行しようとしています。
 そのような環境下、本アワードは、今後の投資による資産形成の在り方について、将来の日本を担う若い人たちに考えてもらいたいという思いから創設しました。
 今回は初回でしたが、応募論文には、学生ならではの新しい視点の考え方、高度な分析など、我々の期待を超える内容が多く見られました。その中から厳正な審査の結果、受賞された皆様におかれましては誠におめでとうございます。
 さて、投資の基本は「長期、積立、分散」と言われます。この3つの基本の中で、学生の方々が優位なのが「長期」です。学生の皆さんにはたっぷりと時間があります。長期的に分散積立をしていれば、預貯金をはるかに上回る成果が期待できます。

           松下会長、松本さん

 我々が学生の頃はNISAもなければ、長期積立分散などを教えてくれる先生もSNSもありませんでした。逆に今は情報が溢れていますが、それでも日本の個人金融資産の半分は預貯金であり、これでは今後インフレの世界が訪れた場合、実質、資産は目減りすることとなります。
 しかし、最近はつみたてNISAなどでは20代から40代の買い付けが急速に伸びており、新しいNISAが始まればこれは益々加速すると思います。古い考え方に囚われない皆さんのような若い世代が日本の預貯金・投資に対する考え方を変えてくれると確信しております。特に受賞者の方々はそうした世代における資産形成の世界でのオピニオンリーダーとなっていただきたいと思います。

 その後、受賞者を代表して優秀賞の松本航輝さんより概要以下のスピーチがありました。

松本さん
           松本 航輝さん

≪受賞者代表挨拶≫
 論文の執筆にあたり、真摯に指導いただいた教授、切磋琢磨した学友に感謝すると共に、このような結果を得た事を喜んでおります。
 私が今回の論文を執筆するに至った経緯として、本アワードの開催趣旨にもあるように、「資産所得倍増プラン」の発表や「ライフプランニング」を含む金融教育の導入など、近年の日本では計画的な生活設計、長期的な資産形成の重要性と必要性が議論されています。しかし、ニュースなどでもよく、日本では個人での株式投資などの資産運用がアメリカなどの諸外国と比べて非常に少ないと耳にする事があります。経済学部に通っている私の周囲でも、株式投資等の資産運用を行っている人はほとんどいません。もちろんまだ学生であり、経済的な理由から継続的な資産運用が難しい側面も大きいと思われますが、話を聞くと「株式投資はギャンブルであり危険だからやらない」と考えている人が大多数でした。2019年の金融庁の発表に端を発した、老後2000万円問題などで資産運用の必要性がよく取り沙汰されているにもかかわらず、経済大学の経済学部生であっても資産運用をしている、もしくは将来的に株式投資などを考えている人が殆ど見受けられないのは何故だろうか?私自身が株式投資などに興味があった事もあり、より一層そのような疑問が私の中で大きくなりました。
 日本において資産運用が普及しない要因を考えた時、最初に思い当たったのは、1990年代初頭のバブルの崩壊でした。ちょうど私達の親世代がバブルの崩壊を経験しているからこそ、投資イコール危険という考えが根付き、日本では個人の資産運用が少ないと思われました。しかしながら確かに心情面からは無視できない要因だとは思われますが、それでは2008年にリーマンショックを経験しているアメリカでは、日本とは違い個人での資産運用が多くなされている事実に矛盾がみられます。よって日本において個人の資産運用が少ない要因は心情的なものだけではなく、何かもっと具体的な経済的要因があるのではないだろうか?と思い至り、今回の論文を執筆するに至りました。
 今回は素晴らしい賞を受賞する事ができましたが、分析内容、提示方法、分析結果の解釈、解決策など、まだまだ改善の余地は多くあり、より精進していきたいと思っております。

 最後に、野村證券金融工学センターの大庭審査委員長より概要以下の総評がありました。

大庭審査委員長(野村證券金融工学研究センター)
        大庭審査委員長(野村證券金融工学研究センター)

≪審査委員長 総評≫
 本アワードは、応募を大学生に絞ることで、粗削りでも将来につながる可能性のある新しい切り口の資産形成の論文を集めたいというチャレンジングな趣旨です。結果として今回、様々なタイプの興味深い論文を応募いただけたこと、また、その応募の中から4本の良い論文を選ぶことができたのは大きな成果だったと思います。
 まず、優秀賞の松本さんは、個人のリスク資産保有がどのようなファクターで決定されるかという大きなテーマを日本のみとG7全体で分析し、その結果をもとに具体的な提案までしっかりと行っていた点が多くの審査員から高い評価を得ました。
 佳作の岩崎さんは、高校の公民・家庭の教科書を1ページごとに精査するという大変ユニークな手法でデータを自作し、このデータをもとに、同じ金融経済分野でも身につけられる金融リテラシーが教科ごとに異なるという結果を導いています。
 敢闘賞の伊藤さんは、ライフプラン策定時に必要となる収入・支出のシミュレーションをかなりのところまで数理的なモデルで分析しています。この論文の評価は審査委員の間で分かれましたが、高度な分析への挑戦を認める審査員から特に高い評価を得た結果としてこの賞を授けるにいたりました。
 アイデア賞の岡本さん野間さんは、通常別々に扱われる、確定拠出年金とESGという2つの大きな近年重視されているテーマを、未来に向けて重要になるという点で結びつけたというアイデアが評価されました。
 今後も、若い研究者の方々が問題意識をもって、積極的に資産形成の研究に参加されていくことを期待しています。

 投資信託協会では今後も資産形成学生論文アワードを継続する予定であり、投資による資産形成の在り方について若い世代に考えていただき、力作が応募されることを期待しております。


                               懇親会の様子
          左:菱田副会長(三井住友トラスト・アセットマネジメント代表取締役社長)  上段中央:岡本さん、野間さん
                      下段(左から):岩崎さん、伊藤さん、杉江副会長
統計データ/調査