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資産形成学生論文アワード2023

投資信託等による自助努力での資産形成の必要性が高まってきています。豊かな人生を送るためには、若い世代の一人ひとりが「自分の資産とどう向き合っていくのか」を考えることが必要です。日本の未来を「投資による資産形成」の観点から考えてみませんか?

2023年12月20日(水)、表彰式を開催しました。詳細はこちらからご覧ください。
資産形成学生論文アワード 2023年(第1回)受賞者
第1回受賞者と作品名、および各作品における審査講評を発表いたします。
優秀賞、佳作は作品本文をダウンロードいただけます。

最優秀賞
該当なし


優秀賞
松本航輝さん(大阪経済大学)「家計の金融資産保有の決定要因 〜G7を対象とした国際パネルデータ分析〜」
【審査講評】
 個別の国の事情で考えてしまいがちな家計の金融資産保有の決定要因について、OECDデータからG7データとの比較で分析した点はオリジナリティが高く、また、基本分析から始まり問題意識に応じて破綻なく論理展開がなされていました。優秀賞を授与し作品を公表致します。

 ただし、分析の内容及び分析結果の提示方法や解釈、また提言としての具体的な解決策等について改善の余地があることから、最優秀賞を授与する水準には至らないと判断致しました。先行事例を出発点として頑健な分析を展開している点は高く評価する一方、説明変数の選択や説明変数と被説明変数の因果関係などについて検討が必要であったと思われます。G7比較においては、リスク性資産残高が大きい国では直近10年くらいの株式の価格上昇の結果として金融資産残高も増えている面があるため、因果が逆の可能性もあるかもしれません。また、高等教育の結果、単に収入が高いことから金融資産が増えているのか、あるいは資産運用によって金融資産が増えているのか、その要因分析まで行われていれば、なお良作になり得たと思われます。リスク性資産と無リスク資産の分析については、両方を分析することは一次元多い議論になっており、リスク性資産と無リスク資産の中間に位置付けられる資産をどちらかに分類すれば両方を分析する必要はなく、よりシンプルでかつ説得力の増す論文になり得ると思われます。さらに、分析に係る分布図等を示すことによって、分析結果の説明力を高めることができたでしょう。
 現実の社会においては、高等教育を受ける機会や高い収入を得ることが叶わない環境におかれる人々も存在します。そうしたことも含めて国民的課題である資産形成を考究する際は、高等教育だけではなく、より幅広い層への金融教育に着目する必要があり、その点の考察も望まれます。
 同論文におけるリスク性資産の保有比率向上によって目指すべき目標が、家計金融資産残高の増加を通じた国民の厚生増大であることに着眼されれば、より社会的貢献度の高い論文になり得ると思われ、その将来性を大いに期待致します。


佳作
岩崎朝妃さん(筑波大学)「高等学校における経済教育と金融リテラシーに関する研究:公民・家庭の教科書分析」
【審査講評】
 教科書の比較を数量分析によって行うというアイデアは斬新でした。また、指導要領改訂後の分析は初めてと思われ、身近に得られるデータを使った新鮮な分析は独創性が高く、佳作を授与し作品を公表致します。
 シンプルながら適切にデータハンドリングがなされ、論理構成や理論展開に齟齬がなくスムーズで読みやすく論じられています。学習指導要領が改定されたことは多く報道されましたが、その状況や効果についてのリサーチは少なく、テーマ性を高く評価致しました。
 一方で、教科書のページ数比較に留まらず、その分析の目的を明確にすることや、分析結果をどのように活かして行くのかといった点については、より深く考察することが望まれます。また、消費者教育は消費者教育推進法に依って家庭科の教科書に盛り込まれ、その後、金融経済教育が高等学校学習指導要領に盛り込まれました。そうした経緯を踏まえたうえで、ページ数のバラつきが内容の差異にどのように影響を及ぼしているのか、さらに、インフレ・金利等の資産運用リテラシーの内容についての検証に言及することによって、より説得力のある論文になり得ると思われます。
 人々をトラブルから守りつつ投資による資産形成を促すという課題に、より具体的に取り組む上では考察で取り上げている金融教育の実施形態やコンテンツなどについての分析は、有用であると思われました。その将来性を期待致します。


敢闘賞
伊藤維胤さん(東京海洋大学)「経済の変動と長寿リスクに対応した次世代のFIRE戦略に関する数理モデルと統計的検証」
【審査講評】
 FIREを巡る複雑な現実世界を、数理モデルを用いてシミュレーションするという非常に難しいテーマにチャレンジしたことを評価し、敢闘賞を授与することと致しました。
 昨今話題になるFIREを数理的に扱った論文は独自性が高く、とても意欲溢れる作品でした。サステナブルなFIREに係る要件は実際的にも重要であり、理論的にも興味深いテーマです。論文全体の構成は論理的で、展開がしっかり整理されており、限られた紙面の中で多くの要素を包括的に考慮されていました。分析方法や結果、考察における記述も丁寧に書かれていました。
 ただ、FIRE戦略を考察する上では、キャッシュフローの分析に留まらず、FIREの意義、効用を含めた考察が必要であります。また、シミュレーションにおける設定パラメーターや、80歳まで働くなど、サイドFIREの設定の現実性、さらに、株式モデル等の設定に粗さが見られ、再考の余地があると思われました。
 筆者の高い分析能力を活かしながら、より問題の本質に迫る議論を展開することを期待致します。


アイデア賞
岡本彩さん(中央大学)、野間夕紀惠さん(中央大学)「確定拠出年金とESGファクターを用いての⾧期投資」
【審査講評】
 これまで深く議論されることが少なかった、確定拠出年金とESGの関係性に着目したことを評価し、アイデア賞を授与することと致しました。
 興味深く、かつ難しいテーマに取り組む上で、全体的に破綻のないスムーズな論理展開がなされていたことも評価できます。
 確定拠出年金を通じたESG投資の環境整備は、制度普及という観点からも一つのテーマであります。それ故に、受託者責任に係る考察や、確定拠出年金とESGを何故結びつけるのかといった点を深く考察する必要があると思われました。また、ESGとリターンの関係性についてより分析し、説明や論拠を充実させることによって、説得力のある付加価値の高い論文になると思われます。さらに、データの図表の引用方法等、論文・レポートの書き方についての習熟も望まれる点でした。
 ESGのリターンに関しての先行研究を確認した上で、筆者なりのオリジナリティを発揮することを期待致します。
資産形成学生論文アワード 2023年 募集要綱(現在募集は終了しております)
2023年募集要項はこちら

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