会長挨拶

資産運用業宣言2020

コロナ禍が続きますが、皆さまにおかれましては、引き続きご自愛ください。早く日常の生活が取り戻せることを心よりお祈りしております。 

 さて、投資信託協会では日本投資顧問業協会と共催で、20201116日に資産運用業界としては初の取り組みとなります「資産運用業フォーラム2020」を開催致しました。資産運用会社の多くの代表者が一同に会し「今後、ますます大切になる資産形成に、より多くの人々に取り組んで頂くために、わたしたち自身はどうあるべきか」を協議致しました。

 その際、まず資産運用会社自らが改めて「決意」を示そうと「資産運用業宣言2020」を公表することと致しました。その宣言の内容をご紹介することで、資産運用会社という存在を広く皆さまに知って頂き、我々がどんな想いをもって、どんな未来を見据えて、日々活動をしているのかを、一人でも多くの方にお伝えできることになれば幸いです。

【社会的使命】
資産運用会社の使命は、皆さまの安定的な資産形成に向けて最善を尽くすと共に、そのための投資活動を通じて社会課題の解決を図り、皆さまの豊かな暮らしと持続可能な社会の実現に貢献することです。

まず、「皆さんの資産形成とより良い社会を創ることを同時に達成することが社会的使命」であることを確認しています。社会的使命はどの業界、どの会社にもある会社の存在意義を示すものですが、資産運用業にとっては投資信託など通じて、皆さまからお預かりした資金を株式や債券に投資をすることで運用成果をあげて、預けていただいた資産を守り、殖やすことが第一の使命となります。
もう一つ使命があります。資産運用会社は皆さまからお預かりした資金で企業が発行する株式や債券に投資をしますが、投資家として、その企業がしっかりとやってくれているかをチェックして、より良い方向に向かってもらうよう働きかけるという役割を担っています。
   企業はその投資された資金を活用することで革新・イノベーションを起こします。例えば、スマートフォンやAI、新しい医薬品など、わたしたちの豊かな暮らしを支える商品やサービスを創り出します。そういった企業には投資をして積極的に応援します。
一方、最近では、気候変動が社会問題になっています。地球環境を守るために資産運用会社として、「CO2を排出する企業には投資をしない」とか「CO2排出量を削減するよう企業に対応を迫る」などの活動も積極的に行うようになっています。もちろん、事業活動を行う主体は企業ですが、資産運用会社も株主、投資家として、その企業・国が環境に配慮しているかをしっかりチェックして、対応が不十分な企業があれば、「正して」もらうよう対話をし、さらにはその企業に「行動を促す」ことで「社会課題の解決を図り、豊かな暮らしと持続可能な社会の実現に貢献する」ということです。
皆さんの資産形成のお手伝いをするのはもちろんですが、そのための投資活動を通じて、社会をよりよくしてゆくこと、それを結果として資産形成につなげてゆくことこそ、資産運用業界の果たすべき社会的使命です。
その社会的使命を果たすために、我々、資産運用業界の「目指すべき姿」を、4つ掲げました。

≪専門性と創造性の追求≫
最良の運用成果と付加価値の高いサービスを提供するために、皆さまから大切な資産の運用を託されていることを役職員ひとり一人がしっかりと自覚し、その責任と誇りを持ち、常に高い専門性と多様な創造性を追求します。

一つめは「専門性と創造性の追求」です。
資産運用には、高い専門性と創造性が求められます。
「皆さまの大切な資産を守り、増やすためにお預りしている」という責任をしっかりと自覚して、運用を託されたプロフェッショナルとして、専門性や創造性をさらに磨いていきます。世界はめまぐるしく変化してゆきますので、政治や経済を読み解くにも専門的な分析が必要になりますし、運用技術も常に進化してゆきます。また、運用だけでなく、投資信託の「トリセツ」として皆さまにお届けする目論見書や報告書を作成する部署の人たちも「こうしたらもっと商品のことをわかりやすくお伝えできる」と考えて、デジタル化を進めたり、常に新しいものに取り組んでゆく創造性も求められています。運用会社はそういう「専門性と創造性を持った集団」あることを目指していきます。

≪顧客利益の最優先≫
皆さまの資産の長期的利益を最優先することは、運用を託される我々資産運用業の拠って立つところであり、その徹底のために様々な取り組みを常に追い求め、皆さまからのご期待にお応えします。

2つめは「顧客利益の最優先」です。どの業界・企業でも顧客第一主義が掲げられています。しかしながら、資産運用会社の場合は少し意味合いが違い、お医者さんや弁護士さんと同じような「責任」を負っているとよく言われるところです。お医者さんや弁護士さんが、病気を治すことや依頼人のためにより良い条件を勝ち取ることより、病院や事務所の儲けを優先するとなると、われわれは困ります。
お医者さんも弁護士さんも、患者や依頼人を第一に守り、安心安全に暮らせるよう最善を尽くしてくれる存在であるからこそ、信頼をしてもらえるのです。
資産を託された資産運用会社は医療の専門家であるお医者さんや法律の専門家である弁護士さんと同じように、資産運用の専門家として、お客様の利益のことを最優先に考えて行動するように法律でもその責任が定められています。
収益が伴わなければ事業は継続できませんし、収益を上げることはお客様へのサービスを提供してゆくためにも必要ですが、あくまでも「お客様の利益を最優先」したその結果として、事業が継続・拡大できるという意味での「収益」です。
資産運用会社の「顧客利益の最優先」というのはこの事業を行う上での「大前提」なのです。

 ≪責任ある投資活動≫
専門的な調査活動や投資先の企業などとの積極的な対話といった責任ある投資活動を通じ、運用資産の価値向上を図り、豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。

 そして、3つ目は「責任ある投資活動」です。
資産運用会社は皆さまからお預かりした資金で行う投資活動として「運用資産を守り、殖やす」ことに加え、投資家として「わたしたちが暮らす社会、そのものを良くする」という社会的使命を負っていると申し上げました。
資産運用会社は企業の株主として、議決権を有しており、株主総会では経営が何年も芳しくない企業の経営者に対しては、反対票を投じることもあります。また、私たちの暮らしがより快適で、かつ持続可能なものになるように、企業に「あるべき行動を促す」といった役割を負っていますが、この行動のことを「責任ある投資活動」と言っています。「地球環境に配慮しない会社には投資しない」とか「武器を作っている会社には投資しない」とか「低賃金で過重労働をさせている企業には投資しない」といったことも重要な投資の判断基準の1つです。
「より良い社会を創る」ために、我々、資産運用会社は投資家として、株主として、そして、債権者として、しっかりと責任ある行動をする、そういう姿を目指しています。

 ≪信認の獲得≫
運用哲学をはじめ自らの強みを明らかにし、切磋琢磨しながら、運用力や提供する商品・サービスの更なる向上を図ることで、今まで以上に皆さまにご信認いただき、より多くの資産の運用を託されることを目指します。

 4つ目は「信認の獲得」です。
大切なお金を託して頂くには、まずは「信じて、認めて」頂くことがスタートです。そのために「我々の会社はこういった運用方針のもとで、こういった商品を作っています」ということを、できる限り明らかにして、資産運用会社同士が競い合って行くことで運用成果やサービスのクオリティをさらに高めてゆくことを目指します。
日本には運用会社が数多く存在し、それらが運用しているファンドは何千本もあります。皆さまから見て、「どの会社の」「どの商品が良いのか、よくわからない」とよく言われます。皆さまに選んでいただくために、資産運用各社それぞれの「特徴」や「強み」をよりわかりやすく打ち出してゆけるようにしたいと思っています。
  ある資産運用会社は「しっかり企業を分析して、新しい価値を創造する企業を発掘するのが得意」であったり、あるいは「割安な銘柄を見つけて投資をします」とか、「新興国の投資に強い」、あるいは、「エブリデイロープライスでとてもコストが安い」というのがウリであっても良いと思います。いずれにしても、各社が自分の特徴や強みを皆さまにできる限り、はっきりと示すようにして「あの運用会社の方針は明確」、「あの運用会社が作っているこのファンドに投資したい」、「自分の考えに合っている」と皆さんに選んでいただけるようにする、そうなることを「目指すべき姿」としました。

 以上が、資産運用会社の「社会的使命」とそれを果たすための「目指すべき姿」です。

 一見、当たり前のことですが、この業界で働く一人ひとりが改めて「決意した」ということを、お客様である皆さまにお伝えすることで、「そういう社会的使命を果たすために、さらに頑張ります!」ということを「お約束」したのが、この「資産運用業宣言」です。  

資産運用業宣言2020

~ わたしたちは皆さまとともに、資産と社会の未来を創ります ~
“ 投資は未来を創るもの、Invest for a Brighter Future ”


これは宣言文のサブタイトルおよびスローガンです。
宣言の内容を短いフレーズで表したものです。
わたしたちは皆さまとともに、資産と未来を創ります。
投資は未来を創るもの、Invest for a Brighter Future

引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

令和2年12月
一般社団法人 投資信託協会
会長 松谷 博司

参 考

◆動画で語る【資産運用業宣言2020】


◆【資産運用業宣言2020】の公表について