東京証券取引所からのご挨拶 「生きる力」としての金融リテラシー

締めくくりは東京証券取引所の専務執行役員小沼泰之が挨拶に立ち、今回の法改正でDC活用の選択肢が広がったことを前提に、時代の変化に即した資産運用とその管理を進め、「生きる力」として金融リテラシーを向上させる重要性についてお話しいたしました。

※本記事は、2020年10月2日にオンデマンド配信した「企業型確定拠出年金カンファレンス2020」の講演内容を基に構成したものです。

小沼泰之氏写真

東京証券取引所 取締役専務執行役員 小沼泰之

このカンファレンスも3回目ですが、DC制度に関するタイムリーな講演や継続教育の先駆的な事例紹介など、今回も充実した内容でした。私からは、東証の金融リテラシーサポート活動との関係で感じたことについてお話しましょう。

継続教育も、より長期かつ広範な視点で

1つ目は企業の皆さんの継続教育活動です。DC導入企業が増えるにつれ、各社の創意工夫による継続教育が充実・多様化しています。本日登壇された企業の取り組みも興味深く、資産形成の無関心層にアプローチし、金融リテラシーを高めてほしいという私たちの活動にとっても示唆に富んだものでした。 私たちは「出張マネ部」という、資産形成の勉強会やセミナーの講師派遣を行っています。若者の関心を引きつけたいので、名前は学校の部活にならって決めました。
当初は「東証マネ部」としてWebでのコンテンツ配信のみでしたが、一歩進めて、要望があれば「出張マネ部」として、どこにでも出向くことにしました。コロナ禍の現在も、オンライン出張の形で継続中です。2017年の開始以来、上場会社約300社、1万1000人の方と会って長期積立分散の意義を伝えてきましたが、DCや積立NISAなどコツコツと投資を続ける動きが広がる中で、確かな手ごたえを感じています。
 2つ目は長期の取り組みの重要さです。多様な人材のより長期の就業が進む中、今回の年金制度改正法の成立により、DCの加入可能年齢の引き上げと受給開始時期の選択肢が広がりました。そのため資産運用に加えて、運用継続など管理の問題にも注目が集まっています。継続教育も、より多様かつ長期的な視点で進めるべきでしょう。

金融リテラシーを高めて豊かな人生を

3つ目は少し大仰ですが、変革の時代の到来です。最近よく聞くデジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタル技術によってビジネスモデルや組織を改革し、企業価値を高めていこうという考え方です。私たちと経済産業省もこの8月に、DX銘柄を選定・表彰いたしました。金融サービスの担い手もDXの進展に合わせて、消費者の多様なニーズやワークスタイルに沿った、より高度化・横断化したサービスを進めています。企業年金の分野でも、新たな流れが出てくるでしょう。
AIやビッグデータなど、新技術があらゆる産業や生活にイノベーションを起こしています。ウィズコロナ・アフターコロナの時代は、社員が資産運用を自分の問題として考えて管理し、生きる力としての金融リテラシーを向上させることで、豊かな人生を送れることを願っております。皆さんにも、「新たな学び」への挑戦を途絶えさせないようお願いいたします。

出演者の氏名・プロフィール

小沼 泰之氏写真

株式会社東京証券取引所 取締役 専務執行役長
小沼 泰之(こぬま・やすゆき)

1961年生まれ、東京都出身。 84年慶応義塾大学経済学部を卒業し東京証券取引所に入所。 東京銀行(現・三菱UFJ銀行)への出向や米カリフォルニア大学バークレー校への留学(同校経営学修士課程を修了)を経験し、その後は東証の国際関連業務に従事。2007年からは上場推進業務に携わり、企業の新規上場支援、新商品(ETF、REITなど)の開発・プロモーションを統括。2017年取締役常務執行役員を経て、2020年より現職。

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