基調講演レポート 確定拠出年金と投資信託の役割

確定拠出年金(DC)制度で資産形成を行う上で、投資信託の役割は欠かせません。その投資信託を今後DC制度においてどのように有効活用していけばよいのか。一般社団法人 投資信託協会会長の松谷博司が講演いたしました。

※本記事は、2019年7月4日に実施した「企業型確定拠出年金カンファレンス2019」の講演内容を基に構成したものです。

松谷博司

松谷博司

DC制度の導入は重要で、
かつ持続可能性の高い福利厚生を促す

本日の「企業型確定拠出年金カンファレンス2019」にてお集まりの企業の年金担当者の皆さまは、従業員の方々の退職金・年金をどのように制度設計をし、それを運営していくか、日々悩まれていることと思います。人材の流動性が高まっている中、新卒・キャリア採用を進めるに当たっても企業における魅力的な福利厚生の充実は欠かせません。

一方で、従来型の退職金制度や確定給付企業年金(DB)制度を維持していくことは財務的な影響も小さくなく、困難が増していることもまた事実でしょう。したがって企業におけるDC制度の導入は、従業員の退職後の生活資金を確保しながら、同時に企業の財務リスクをコントロールするという二重の意味で、きわめて重要で、かつ持続可能性の高い福利厚生を促すものであると確信しております。

DCの投資信託で長期・分散・積立投資を行い、
資産を積み上げる

しかしながら、ただDC制度を導入するだけでは十分ではないと思います。従業員の方々に将来の資産を十分に積み上げてもらうためには、DCの掛金自体を成長させていくように制度運営していく必要があります。ゼロ金利が長く続く中、お金にも“働き方改革”をしてもらうということです。お金は24時間365日、世界中で働いてくれます。

DCの運用商品は、株式を組み入れた投資信託やバランス型ファンドなど経済成長の成果を享受できる商品から、より保守的な商品まで豊富にそろっています。最近では、ライフステージに合わせてポートフォリオの中身を自動的に変えていく、「ターゲット・デート・ファンド」や「ライフサイクルファンド」と呼ばれる商品もあります。

例えば新卒社員なら40年程度DCに加入することになりますが、それだけの長期間にどのように資産を成長させていくのか、お金にどう働いてもらうのかは、きわめて重要なことです。それを従業員の方々に十分にご理解いただき、できれば入社時点で具体的にアクションを起こしていただくことが肝要かと思います。

あくまで過去の実績ですが、金融庁の試算によれば、国内・先進国・新興国の3つの地域の債券と株式に6分の1ずつ20年間、長期・分散・積立投資をすると、年平均で4.0%の収益を得ることができています。その間、リーマン・ショックという世界的な経済危機が起きているにもかかわらず、です。

その試算を前提に計算すれば、例えば毎月2万円の積立を40年間(480カ月)継続すると、投資元本が960万円なのに対し運用資産残高は約2300万円にもなります。また、35歳の人が毎月3万円を30年間(360カ月)積み立てると、投資元本が1080万円なのに対し、運用資産残高は2055万円にもなります。

時間を味方につけて資産を形成していくわけですから、できるだけ早くから長期・分散・積立によって世界経済の成長に投資するのが有効であることは、すでにさまざまな形で実証されています。

従業員に対し資産形成に関する知識を
提供し続けることが重要な福利厚生の1つ

しかしながら、金融や投資、年金制度というものは、なかなかなじみにくいものでもあります。金融機関で40年勤めた私自身を振り返ってみても、20代で年金のことを真剣に考えていたかというと、正直そうとは言えません。若い方々に十分な理解をしていただくためには、「自分ごと」として具体的にイメージしてもらう必要があるでしょう。

2018年5月のDC法改正で、企業型DCを実施している事業主では、継続投資教育が従来の配慮義務から「努力義務」に強化されました。企業の担当者の方々は大変ご苦労をされていると思いますが、皆さまのここからのご尽力が、企業型DC制度を運営していくための要だと思います。

私は仕事柄、多くの企業の経営者や人事担当者の方々とお会いする機会があります。そこで感じるのは、従業員の方々の働き方や人生観などが大きく変化してきて、すべての従業員に等しく喜んでもらえるような福利厚生の仕組みづくりが難しい時代になったのではないかということです。そうした中で、あらゆる従業員に共通して必要とされながらも、1人ではなかなか難しいのが資産形成であり、お金に関する知識、特に投資に関する情報収集のはずです。

信頼できる事業主が資産形成や投資に関する知識を目利きし、適切な内容を従業員に継続的に提供していただくことは、直接的なお金の給付に勝るとも劣らない重要な福利厚生の1つではないでしょうか。それが、従業員の方々が安心して働ける環境づくりとなり、結果として皆さまの士気が高まって、企業業績の継続的な向上、ひいては日本経済の成長につながるものと思います。

本日のカンファレンスが、皆さまの企業のDC制度運営においてお役に立てれば幸いです。また投資信託協会におきましても、DC制度がさらに使いやすい制度になるよう、関係各位に働きかけていきたいと考えていますので、よろしくお願い申し上げます。

出演者の氏名・プロフィール

松谷 博司

一般社団法人 投資信託協会 会長
松谷 博司(まつたに・ひろし)

1959年生まれ、大阪府堺市出身。83年3月大阪大学経済学部卒業。同年4月野村證券(現野村ホールディングス)入社。野村證券在職中は、主として企業金融業務に携わる。2006年4月野村證券執行役、13年4月同社専務執行役員、15年4月同社取締役、16年4月野村アセットマネジメント取締役会議長、17年4月野村資本市場研究所代表取締役社長。19年6月投資信託協会会長に就任。

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