投資信託協会からのご挨拶 社会課題の解決に向けて “投資” の2つの目的

冒頭、投資信託協会の会長、松谷博司が挨拶に立ち、投信協会が設置した研究会「つみけん(すべての人に世界の成長を届ける研究会)」が公表する報告書に掲げられた「2041年の資産形成のありたい姿」の実現に向け、職場での支援の重要性、投資の2つの目的、資産運用会社の果たすべき役割についてご紹介しました。

※本記事は、2022年9月1日~9月30日にオンデマンド配信した「企業型確定拠出年金カンファレンス2022秋」の講演内容を基に構成したものです。

松谷博司氏写真

投資信託協会会長 松谷博司

自助での資産形成でウェルビーイングを目指すには
職場での支援が何より重要に

個人の皆さまの資産形成の促進は、少子・高齢化に長寿化が加わった日本にとって、重要な社会課題の一つです。日本の公的年金についてはいろいろ言われていますが、日々の生活を営んでいくという点で言えば、先進各国の中でも比較的、充実していると私は思います。ですから、自助での資産形成は、30年以上の長いシニアライフを「楽しく暮らす備え」として考えるのが適切ではないかと考えています。

目指す社会の姿は「すべての人が安心して、自分らしい生活をおくることのできる社会」です。はやりの言葉で言えば、ウェルビーイングを目指すということでしょうか。その中で、DC・iDeCoの活用は重要な役割を担っており、現役時代を過ごす職場での支援が何より大切です。

企業のDCのご担当者の皆さまは、他にも重要な仕事がある中で、社員が「手続きがよくわからない」と連絡してきたり、「投資の継続教育を実施せよ」といった面倒なことを言われたりと大変な状況だとお察しします。

それでもご担当の数年の間、しっかりとこの業務に取り組めば、皆さまご自身が「生活に必須のスキルとして“お金にまつわる知識”」を身に付けることができるはずです。「人事・総務部として会社の人的資本の向上への貢献」といった重要なミッションを負っているとしても、まずは皆さんが率先して、ご自身の「楽しい」シニアライフに備えてほしいと思います。

“投資”を社会への貢献・参画と捉え
“オ・ト・ナの投資”を

投資には2つの目的があります。もちろん、一つは「お金を殖やす」こと。もう一つは投資を通じた「社会への参画」です。

「2041年の資産形成のありたい姿」
「“すべての”人が、少しずつ時間をかけて、投資を継続し将来のために備えることが、今この瞬間を大切に生きることに繋がる」と認識され、実践されている社会。
「“すべての”人にとって投資を継続することが社会への参画であり、持続可能な社会を創造することに貢献できる」と認識され、実践されている社会。

一つ目の目的である「お金を殖やす」ことは、《今、この瞬間の生活を充実させるために、少額から時間を味方につけて》という文脈で捉えておくことが大切だとしています。

将来に備えて、「お金を殖やす」可能性を高めるために、日々の生活に支障のない範囲で、少額から「長期・積立・分散」投資をするのが良い手法だということは、世界中で何十年にもわたって実証されてきました。DCという制度はその手法が組み込まれていて、かつ税金が優遇された制度です。

もう一つの目的「社会への参画」です。選挙の1票と同じように《18歳になったら1万円》というキャッチフレーズを掲げてはどうかと考えています。
自分が暮らす社会を自分の投資で創っていくという意味での社会への参画です。今までも先輩たちがそうしてきましたし、これからは我々が投資を行う番です。それが「“オトナ”が行う投資」だと思います。

このことを「投資から得られるリターンは“ありがとう”の対価である」と言う人がいます。私もそう思います。投資を自分のためだけの「殖やす、儲けるだけの手段」ではなく、「社会への貢献・参画」として捉え、投資によって社会が発展し、その結果としてお金が増える――。これこそが投資の本質だからです。当然、長期投資が大前提とはなりますが、このことが日本の社会においてコンセンサス・社会的な合意となることが、より多くの人が資産形成に取り組むに際して極めて大切だと考えています。

皆さまの資産形成と未来社会の創造に向けて
資産運用会社の役割と存在意義

そして、皆さまから大切なご資金を「信じて託される」投資信託を作っている我々、資産運用会社は、皆さまの「殖やす」という目的のために、運用力を磨き、最良のパフォーマンスを追求するとともに、「社会への参画」として、投資先企業とのエンゲージメント(対話)を通じて、企業のイノベーションや持続可能な社会への活動を応援し、企業価値の向上に貢献していきます。

業界にはまだまだ課題もたくさんありますが、我々、資産運用会社の存在意義をかけて、皆さまの資産形成と未来社会の創造に向けて、業界を挙げて取り組んでまいります。引き続きよろしくお願いいたします。

出演者の氏名・プロフィール

松谷 博司氏写真

一般社団法人 投資信託協会 会長
松谷 博司(まつたに・ひろし)

大学卒業後、野村證券に入社。企業金融部門、インベスト・バンキング部門で重職を歴任後、野村アセットマネジメント取締役会議長、野村資本市場研究所社長を経て、現在に至る。

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