個人の投資・資産形成を支える制度として注目されているNISA(ニーサ)。ひと口にNISAといっても、一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISAの3種類があります。3つのNISAそれぞれの違いは何? どう活用すればいい? ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんに教えていただきました

大竹 のり子
(おおたけ・のり子)さん
ファイナンシャルプランナー。株式会社エフピーウーマン代表取締役
編集者を経て2005年4月にお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。
講演、メディア出演、スクール運営等を通じてお金の知識を学ぶことの重要性を伝えている。これまでの著書は40冊以上に及ぶ。一般社団法人金融学習協会理事。
NISAには、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3つがあります。それぞれの違いって何ですか?

大竹さん
名称に同じNISAとついていますが、この3つはそれぞれ特徴が違います。例えば、非課税となる投資枠を比較しても、一般NISAは年間120万円ですが、ジュニアNISAは年間80万円、つみたてNISAは年間40万円です。
利用の対象となる金融商品を比較しても、一般NISAとジュニアNISAの場合は、上場株式、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などと選択肢も多いですが、つみたてNISAについては、金融庁が設けた条件を満たす長期の積立投資に向いた株式投資信託とETFに限られています。こう考えると、それぞれのNISAは自ずと活用法が違ってきます。

ではこれら3つのNISAをどう使い分ければよいのでしょうか?

大竹さん
まず、ジュニアNISAについては、利用対象者が0〜19歳の未成年ですから、子どものための資産づくりとして使うことが想定できるでしょう。こちらは後ほど詳しく説明します。
一般NISAとつみたてNISA、この2つの制度は併用することができません。どちらが自分に合っているのかを考えるうえで、まずは2つの制度の異なる部分に着目してみましょう。一般NISAではつみたてNISAで対象となっていない上場株式やREITにも投資できます。また、一般NISAは非課税となる投資枠が120万円ですので、つみたてNISAの年間40万円より大きな額です。しかもつみたてNISAでは定期的に商品を買い付ける「積立」による投資でないといけません。この点を踏まえると、上場株式やREITに投資をしたいという場合や年間40万円以上の投資をしたい場合、また、自分の好きなタイミングで商品を買い付けたいという場合は一般NISAという選択になると思います。
一方つみたてNISAは、利用できる商品は金融庁が定めた条件をクリアした投資信託・ETFに限られていますが、商品が限定されている分、投資初心者にとっては商品を選びやすいという考え方もあります。また、非課税期間が一般NISAの5年間に比べ20年間と長くなっていますので「少額からコツコツ長期で資産形成を」と考えている人はつみたてNISAが向いているでしょう。
つみたてNISAで初めて投資に触れる方も多いと思います。どのような投資信託を選べばよいのでしょうか?

大竹さん
これから投資を始めるという初心者の方であれば、まずは国内外の株式や債券などが組み入れられている「バランス型」の投資信託を1本選んで、それに投資することから始めてみてはいかがでしょうか。つみたてNISAの対象商品を見ても、バランス型の投資信託は数多く見受けられます。
しかもバランス型の投資信託は定期的に資産配分をチェックして、当初の資産配分からズレた配分を元の配分比率に調整する「リバランス」を自動的に行ってくれます。特につみたてNISAのように、長期にわたって投資を行う場合は、リバランスをするのとしないのとでは大きく運用成果に関係してくるでしょう。また、商品を買い替えるとその都度、非課税枠を使ってしまうことになります。つみたてNISAは非課税枠の上限も40万円と他のNISAに比べても低く設定されていますので、非課税枠を有効に使うという意味でも、投資信託が自動的に配分を見直してくれるバランス型の投資信託は優れているといえます。

先ほどお話にあった、ジュニアNISAの上手な使い方を教えてください。

大竹さん
ジュニアNISAには3つの用途が考えられると思います。
1つ目は、子どもの教育資金の準備のためです。ただし、ジュニアNISAの対象となる商品は投資信託や株式といった価格変動型の商品です。高校や大学などの入学・進学時など、使う時期が決まっている教育資金を作るのに、価格変動型の商品に頼りすぎるのは良いとはいえません。例えば教育資金のために学資保険や積立貯蓄を活用しているものの、実際にはそれだけでは足りない部分をジュニアNISAで運用して充てるという気持ちで準備した方が良いでしょう。
2つ目は、生前贈与のために活用します。贈与者(祖父母や親など)1人につき年間110万円まで贈与税の基礎控除が認められているため、その基礎控除の枠内であれば、子どもや孫に非課税で資産を贈与できます。生前贈与で受け取るお金をジュニアNISAで積み立てれば、贈与を非課税で受け取り、さらにその資金を非課税で運用することになりますので、相続対策の延長としてジュニアNISAを活用することができます。
3つ目は、子どもの金融教育に用いるというものです。ジュニアNISAは、当初は親などが運用・管理をしますが、子どもが20歳になった時点で一般NISAに資産を引き継ぐなどして子ども自身が運用・管理を行うことになります。子どもがある程度、物事を理解できるような年齢になった時から、ジュニアNISAで運用していることを教えておけば、20歳になった時には自分の意思でお金を運用していこうと考えるようになるはずです。子どもに対するお金の教育のツールとして、ジュニアNISAは活用できるのです。

iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)も話題になっていますが、iDeCo とNISA、どう使い分ければよいのでしょうか?

大竹さん
その人が両方の制度を使うことができる立場にあるのであれば、私は積極的に両方使ったほうがよいと思います。iDeCoもNISAも投資によって得た収益に対する税金が非課税になるわけですから、運用面で非常に有利になります。できることなら、使える非課税枠はめいっぱい活用したほうがよいでしょう。
ただ、iDeCoはあくまでも老後資金を作ることを目的とした制度で、原則60歳になるまで運用資産を引き出せません。NISAでは自分の好きなタイミングで商品を売却し、現金化できます。iDeCoと比べると機動力が違います。長期にわたって引き出しができないことにためらいがあるのなら、NISAを選んだほうがよいでしょう。
せっかく用意された制度ですので利用したいところですが、NISAに回すお金がないという人もいると思います。投資にまわすお金はどうやって捻出すればいいでしょう?

大竹さん
お金を貯められる人は「先取り貯蓄」ができるのですが、貯められない人は「成り行き貯蓄」になりがちです。
成り行き貯蓄というのは、収入から支出を差し引き、余った分を貯蓄に回すことです。何かそれが普通だと思ってしまいがちですが、成り行き貯蓄だと毎月、貯蓄できる額が一定ではなく、月によっては赤字で貯蓄できない場合もあります。貯蓄は継続が大事です。貯蓄できない月が出てしまうと、次回も「まあいいか」と曖昧になり、いつか貯蓄をしなくなってしまいます。
それに対し、先取り貯蓄では、まず貯蓄する分を収入から差し引き、残った分でその月の生活をします。お金を貯めるクセをつけたいのであれば、先取り貯蓄を心がけましょう。
先取り貯蓄をした結果、生活費が足りなくなるというのは本末転倒です。先取り貯蓄と節約をバランスよく組み合わせて、投資に回すお金を作る必要があります。
節約のコツは次の3つだと思います。- (1)金額が大きなものを節約する
- (2)我慢しなくてもよいものを節約する
- (3)効果が持続するものを節約する
具体的には、「スマートフォンなどの通信費」や「住宅ローン」の見直しが効果的です。通信費や住宅ローンは家計の多くを占めますので金額が大きいですし、これらは、一度変更するときに手続きの手間がかかるものの、それ以降は節約の我慢を強いられるようなことがなく効果は持続します。
実は、節約と聞くと多くの人がこれとは逆の、金額が小さく、我慢をしなければならず、効果も持続しないものに意識がいきがちなのです。代表的なものは「食費」です。4人家族で月の食費を2万円でやりくりしているという話も聞きますが、食費の節約は生活の質そのものを低下させ、健康にも決してよいことではありません。節約は必要ですが、間違った節約はしないようにしてください。

※このインタビュー内容は、個人の発言に基づき構成されており、投資信託協会がその内容を必ずしも保証するものではありません。