不動産投資信託も資産運用の選択肢のひとつに

ファイナンシャルプランナー深野康彦氏

深野 康彦(ふかの やすひこ)氏。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

深野康彦氏


配当という面に着目すると、外国債券に投資する選択肢もあります。外国債券との比較では、リートにはどのような強みがあるのでしょうか。

やはり大きいのは、為替リスクがない点です。最近の外国債券は、為替相場の影響を考慮すると価格変動の幅が非常に大きくなっています。本来、外国債券は資産全体の価格変動を穏やかにするために、株式と組み合わせたりしながら利用する金融商品です。にもかかわらず為替ヘッジをしていない外国債券は、下手をすると株式と同じくらい価格が変動しているイメージがあります。

リートには為替リスクはありませんし、価格変動も個別株よりはなだらかです。資産全体の価格変動を抑制するために、外国債券の代わりにリートを活用するという選択肢は、もっと検討されていいと思います。

一方で、もちろんリスクもあると思います。リートの代表的なリスクとしては、どのような点があげられますか?

リスクが抑制されているとはいっても価格は変動しますから、元本割れのリスクはあります。そしてリートで特にご注意いただきたいのは、金利リスクです。リートは基本的には投資家から集めた資金に金融機関等からの借入金をプラスして不動産に投資する仕組みになっています。金利が上がると借入資金を調達するコストが上昇しますし、その分を賃貸料に反映できない限り、利益が圧縮されます。利益が下がれば、分配金の水準も下がり、ファンド自体の価格も下がってしまいます。

深野康彦氏

個別株にも金利の影響はありますが、リートの方が密接度がより高いのです。どのくらいの資金を借り入れているかという情報は、投資法人のWebサイトなどで公開されていますから、その点は細かくチェックしておくのがお勧めです。借入比率(自己資金に対する借入資金の比率)は、どの水準が適正とは一概には言えませんが、一般的には借入比率の大きいファンドほど、金利の影響を受けやすいでしょう。

リート購入時のチェックポイントは、そのほかにどのような点がありますか?

購入しようとしているリートが、どんな不動産に投資をしているかは、チェックする必要があります。リートによって、投資戦略が異なるからです。さまざまなタイプの不動産に投資する「総合型」のリートだけでなく、商業施設やマンションに特化していたり、特定地域の不動産に特化しているものもあります。日本にはありませんが、米国には病院などのヘルスケア施設にターゲットを絞り、安定的な収益を狙うリートもあります。「商業施設は景気循環の影響を賃貸料に反映させやすく、好景気に強い」「マンションは賃貸料が安定しているので不景気に強い」といった、不動産ごとの特徴を押さえたうえで、投資判断するとよいでしょう。

個別株のように、無価値になるリスクはあるのでしょうか。

実際に破綻したリートもありますから、リスクはゼロではありません。しかし、たとえ破綻した場合でも、個別株のように証券が無価値になるということは、まず考えにくいと思います。不動産投資法人は、基本的に不動産の賃貸管理以外の業務はしていないわけですから、通常、所有している不動産の一部は残余資産として残ると考えられます。

リスクを抑えながらリートに投資するには、どのような点に気をつけたらいいでしょうか。

個別株と同じように、分散投資と長期投資が重要です。リートならではの留意点としては、1単元投資をできるだけ避けてほしいと考えています。リートはキャピタルゲインよりもインカムゲインを期待できる商品ですが、そうは言っても大きく値上がりすれば、売却益を得たくなるものです。そのときに1単元しか持っていないと、売るか売らないかの二つしか選択肢がなくなってしまいます。2単元以上あれば、一部は売り、一部は分配金を得るために残しておく、という選択肢も取れるようになります。

資金的に2単元以上の投資が難しければ、契約型投資信託の一つであるリートを組み入れたファンドを利用するのも一つの方法です。リートファンドなら、個別リートよりも細かな単位で(分割して)売却することができます

購入後は、どのような点をチェックしておけばいいでしょうか。

基本的にリートは、不動産のプロに運用を任せており、信託報酬のような形の運用手数料を支払っています。ですから個別株のような細かなチェックは不要でしょう。決算報告を受け取ったときに、前期と比べて投資する不動産が大きく入れ替わっていないか、分配金が下がっていないか、といったことをチェックすればいいと思います。長期投資が基本ですから、値動きを毎日追う必要もないでしょう。ただし日経平均株価などと比べて大きく値下がりしていたときは注意をして、投資法人のWebサイトを見るなどしてその原因を探ってみるのがお勧めです。


※2011年12月9日時点の内容となります。

※このインタビュー内容は、個人の発言に基づき構成されており、投資信託協会がその内容を必ずしも保証するものではありません。