お金に縛られないためにもやっぱりお金は大切です

経済アナリスト森永卓郎氏

東京都出身。1980年東京大学経済学部卒業。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局、(株)三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)主席研究員等を経て、現在は獨協大学経済学部教授。専門分野はマクロ経済・計量経済・労働経済・教育計画。ミニカー他、さまざまなコレクターとしても有名。

森永卓郎氏


それでは、投資にあたって気をつけるべきことはありますか。

投資は「難しい」と思われがちですが、その基本は「安いときに買って、高いときに売る」という至ってシンプルなもの。しかし日本の場合、高いときに投資が活発になる傾向があるようです。ですから、タイミングとしては、マネー誌が創刊したら「そろそろやばい」、廃刊したら「チャンス」ととらえたほうがいいのかもしれません(笑)。

後は「リスク」と「リターン」の設定です。その組み合わせは「ローリスク・ローリターン」「ミドルリスク・ミドルリターン」「ハイリスク・ハイリターン」という、3つのパターンしかありません。「ローリスク・ハイリターン」の商品があれば、それは詐欺だと思って間違いない。ターゲットをどこに設定するかは人それぞれで、職業や所得、資産、その人の人生観などによっても異なりますから、自身が「どれだけリスクをとれるか」をきちんと見極めておく必要があるでしょう。

また、「分散」も投資の基本です。反省も踏まえてお話すると、私自身、社会人になりたての時に全財産を「金」投資につぎ込み、大失敗したという苦い経験があります。そのときに分かったことは、「一極集中型の投資をしてはいけない」ということ。今から思えばあのときの失敗は、その教訓を学ぶための授業料でしたね。

その「分散投資」を手軽に実現させるものとしては、投資信託がありますね。

森永卓郎氏

そもそも投資信託がなぜ必要かといえば、「金あり、暇あり、知識あり」という、三拍子そろった人がほとんどいないからです。たくさんお金があり、一日中株価チャートを見ている時間があり、自分で銘柄を選ぶことができるという人であれば、投資信託を買う必要はないでしょう。多くの人にはそれができないから、信託報酬を払い、ファンドマネジャーにお任せするわけですね。

ただし、ファンドマネジャーに任せれば、ぼろ儲けできるというものではありません。ファンドマネジャーは決して「預言者」ではなく、リスクとリターンの組み合わせを設定し、方向性を決めてくれるだけの人。ですから、その組み合わせのうち、どのような商品を選ぶのかはそれぞれの選択です。繰り返しになりますが、「ローリスク・ハイリターン」はありえないわけで、大きなリターンが期待できる商品は、リスクも高いということを忘れてはならないでしょう

投資の期間についてはどのように考えればいいのでしょう?

私は中期投資が一番難しいと思っています。なぜなら、例えば東日本大震災のような予測不可能な事態が起こる可能性があり、その影響を大きく受けてしまうからです。けれども、そうしたショックも時間が経てばやがては吸収されていきますから、やはり長期投資がもっとも収益をとりやすいといえるでしょう。

もしくは、デイトレードのような超短期でも勝てる可能性はあるでしょうが、それは「0.1秒が勝敗を分ける」といった特殊な世界です。ずば抜けた反射神経、運動神経が求められますから、普通の人にはまず無理だと思いますね

最後に、森永さん自身はお金についてどのようにお考えですか?

私がこれまでの人生で分かったことは、「お金はこわい」ということです。お金がないと毎日不安を抱えて暮らさなければならないし、さまざまなリスクに対応することもできません。かといって、逆にお金を持ちすぎていると「お金を増やす」ことだけが人生の目的になり、いわば「お金中毒」になってしまいます。何十億もの資産を持っているにもかかわらず、常にお金が減る恐怖におびえている人を、私はずいぶん見てきました。つまり極端な貧乏も極端な金持ちもダメなのです。

最も幸せなのは、ほどほどにお金を持っている人でしょう。何より、自由な生き方ができるようになりますから。私自身、ある程度のお金があるからこそ、干されることを恐れず(笑)、好き勝手なことが言えるわけです。つまりお金に縛られないために、お金を貯めるといってもいいのかもしれませんね。


※2011年11月7日時点の内容となります。

※このインタビュー内容は、個人の発言に基づき構成されており、投資信託協会がその内容を必ずしも保証するものではありません。