山崎俊輔氏インタビュー

山崎俊輔氏。1995年、中央大学法学部卒業。同年、株式会社企業年金研究所入社。2000年、株式会社FP総研入社。2001年、情報サイト『All About』にて、マネーチャネル「30代からの将来設計と401k」連載開始。2002年、商工会議所年金教育センター主任研究員(嘱託)として、企業年金・退職金制度の見直しに関する執筆、講演等の啓発活動に取り組む。2006年より 企業年金連合会会員センター調査役確定拠出年金担当(嘱託)。ファイナンシャル・プランナー、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。近著に「お金の知恵は45歳までに身につけなさい」。

2回目の今回は、確定拠出年金の商品選択と運用のポイントを伺います。まず確定拠出年金では、どのような金融商品を選択できるのでしょうか。

選択できる金融商品はその企業の規約によって異なりますが、法律上は最低限、3種類の商品をラインアップすることが義務づけられています。またそれらのうち少なくとも1種類は元本確保型商品でなければなりません。平均は約16種類。会社が、定期預金から保険、さまざまな種類の投資信託まで、リスクの異なる複数の商品を提示しますので、その中から従業員が自分の責任で選択します。

どのような商品を選んだらいいか分からないという方も多いようですが、選択のポイントを教えてください。

まず重要なのは、元本が確保されているか、そうでないかをチェックすることです。ただし元本確保型の商品には、満期まで持っていれば元本と利回りが確保されるものの、中途解約をすると元本を下回る場合がある商品も含まれている点には注意が必要です。

元本が保証されていない商品(リスク性商品)は、主として投資信託になります。投資信託は投資対象によって「国内株式型」「国内債券型」「外国株式型」「外国債券型」の4つに大別できます。このほか、さまざまな投資対象に分散投資する「バランス型」や、新興国の株式や債券、不動産投資信託(リート)など投資対象を特化したものもあります。

従業員の方が最低限考えておくべきポイントは、「元本が確保されている商品」と「元本が保証されていない商品(リスク性商品)」の比率です。つまり自分はどれだけリスクを取ることができるのかを、しっかり考えていただきたいと思います。

定期預金など元本確保型の商品の割合を多くすれば元本割れをする可能性は低くなりますが、高いリターンを得ることも難しくなります。逆に投資信託のようなリスクのある商品の割合を増やせば、高いリターンは狙えるものの元本割れをする可能性も高まります。

ちなみに統計データによれば、確定拠出年金の加入者は元本確保型商品とリスク性商品を平均で6:4の割合で保有しています。 

「6:4」という割合は、標準的な目安になるのでしょうか。

山崎俊輔氏インタビューこの数字はあくまでも平均であって、目安ではありません。資産全体でどの程度のリスクなら納得できるかを考えるようにしてください。例えば、資産のうち定期預金を6割、投資信託を4割持っていたとして、投資信託部分が年間20%下がったとします。すると資産全体では8%のマイナスになる。この年間8%のマイナスを納得できるかどうか、ということです。

逆に投資信託の部分で+3%の上昇、元本確保型の部分で+0.5%の利息が得られたとすれば、全体とすれば1.5%のリターンになります。リスクとリターンのバランスを意識しながら自分の資産配分を考えていくのです

資産全体のバランスがポイントですね。

その通りです。許容できるリスクは、確定拠出年金以外の資産保有額や住宅ローンの有無、投資経験や投資スタンスなどによって大きく変わってきます。確定拠出年金だけを見て考えるのではなく、ライフプランや手元の資金も踏まえた統合的なポートフォリオ、つまり何にどういう配分で投資し、どれだけリスクを取るかを考える。「全体を最適化する」という発想が重要です。

例えば若い人が「老後の資産形成」が目的で資産運用をするなら、手元資金で投資信託を買うよりも確定拠出年金を利用したほうが、さまざまなメリットを受けられます。確定拠出年金で選択できる投資信託は、金融機関の窓口で販売されているものとは異なり、原則として販売手数料がかかりません。運用管理費用(信託報酬)についても、割安に設定されているものが多く、売却時の信託財産留保額もとらない投資信託が多いのです。要するに同じ投資信託を買うならば、こうしたコストの分だけ確実に確定拠出年金が有利になります。

さらに大きいのが、すでにご説明した税制上のメリットです。60歳まで引き出せない代わりに、確定拠出年金で運用している間は、運用益に対する税金がかからないのです。

こうしたメリットを最大限に活かして、老後に備えた資産運用を最適化する方法としては、例えば手元資金で定期預金など元本確保型商品を多く持ち、確定拠出年金では投資信託を中心に運用するという方法が考えられるでしょう。一概に間違いとはいえませんが、手元資金で投資信託をたくさん保有し、確定拠出年金では元本確保型商品ばかりを買っている方は、確定拠出年金のメリットを活かしきれていないですね。全体のポートフォリオを一度見直してみるといいかもしれません

中には「うちの会社の確定拠出年金には、投資したい商品がない」というケースもあるようです。そのような場合、何か打開策はありますか。

会社の確定拠出年金制度に魅力的な商品がない方におすすめしたいのは、労働組合などを通じて会社に商品の追加を要望することです。従来の確定給付型の企業年金は、第1回目でお話ししたように、企業が責任をもって従業員の退職金や年金を運用する制度です。従業員側が運用に対して口を挟む余地はありません。

しかし確定拠出年金は、従業員が自分のお金を自分で運用する制度。より優れた商品がほかにあることを提案すれば、企業側としても安易に無視できません。確定拠出年金は、従業員側の意見で制度自体が良くなっていく可能性があるのです。

 


※このインタビュー内容は、個人の発言に基づき構成されており、投資信託協会がその内容を必ずしも保証するものではありません。

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