不動産投資信託も資産運用の選択肢のひとつに

ファイナンシャルプランナー深野康彦氏

深野 康彦(ふかの やすひこ)氏。AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

深野康彦氏


不動産投資信託(J−REIT、以下「リート」)に対して、「よく分からない」という印象を持っている一般投資家の方は少なくありません。まず最初に、リートがどのような金融商品なのかをご説明いただけますか。

大雑把に言えば、例えばAという立派なビルがあったとしましょう。そのAビルの一角を持つことができ、その分の家賃収入が得られて、しかもいつでも売買できるというイメージです。つまりリートは「不動産の賃貸管理をする専門の会社」に投資をする金融商品です。

その不動産の賃貸管理をする専門の会社のことを、「不動産投資法人」と言います。不動産投資法人という会社に対して、投資家が出資するのが、基本的な仕組みになっています。不動産のオーナーとして、不動産の運用や賃貸管理をしてくれる会社を雇っているイメージ、と考えると分かりやすいかもしれません。

リートは、証券取引所に上場しており、株式と同じように市場で売買できます。東京証券取引所には現在、34銘柄のリートが上場しています。

J-REIT

個別の不動産会社の株に投資するのとは、何が違うのでしょうか。

決定的な違いは、リート(不動産投資法人)は、不動産の賃貸業に徹しているところです。不動産会社とは異なり、例えばマンションを建てて売り出す、といった不動産開発は行いません。また企業(事業会社)は通常、得た利益の一部を「内部留保」という形で手元に積み立てておきます。これは不動産会社も同じです。

高い利回りを実現する利益分配

しかしリートは、事業会社とは異なり、内部留保をしない仕組みになっています。その期に得た利益のほとんどを、投資家に分配するわけです。個別株式に比べると、オープンで分かりやすい仕組みになっています。

金融商品としての魅力は、どのような点にあるのでしょうか。

深野康彦氏

利益のほとんどを投資家に還元するわけですから、個別株に比べて高い利回りが期待できる点でしょう。現在のリートの平均的な利回りは5%程度となっています。もちろんこの数字は、不動産市況などによって変動しますし、将来にわたって利回りが保証されるものではありません。しかし日本でリート市場が誕生してから10年が経ちますが、その間の推移を見ても、平均的に高利回りをあげている金融商品だと言えます。

金融商品の保有によって期待できる利益には、価格変動によるキャピタルゲインと、配当金や分配金から得られるインカムゲインがあります。リートは後者のインカムゲインを獲得するのに適した商品です。個別株に比べると、本来値動きは大きくありませんから、短期で売買をしてキャピタルゲインを狙うという投資スタイルには、向かないかもしれません。

J-REIT分配金利回り

不動産に投資して、安定的に家賃収入を得られるのが魅力の金融商品、というイメージでしょうか。

はい。実物不動産への投資と異なるのは、リスクが抑えられている点です。実物不動産への投資には、どうしても空室リスクや、流動性リスクがつきまといます。例えばマンションの一室に投資をした場合、入居者が見つからなければ、その間は当然収入が入ってきませんし、売りたいと思っても、すぐに買い手が見つかるとは限らないのです。

しかしリートは、複数の不動産物件に分散投資しており、しかも証券市場でいつでも売買できるわけですから、そうしたリスクは抑えられています。

また実物不動産の投資では、利益があがれば当然、確定申告をしなければなりません。その結果として課税所得が高くなれば、例えば健康保険や介護保険の負担がアップする可能性も出てきます。社会保険料や税金も含めてトータルで考えると、思ったほど利益が大きくならないケースも考えられます。

しかしリートであれば、「源泉徴収あり」の特定口座で売買する限り、得られた利益や分配金を確定申告する必要はありません。 つまり利益をあげても、健康保険や介護保険の負担はそれまでと変わらない。こうした税制や社会保険上のメリットは、定期収入が限られるリタイア世代にとっては非常に大きいと思います。

安定したインカムゲインが期待でき、税制・社会保険上の負担増も考えなくていい。そうした観点でリートは、シニア層に特にフィットする金融商品だと言えます。


※2011年12月9日時点の内容となります。

※このインタビュー内容は、個人の発言に基づき構成されており、投資信託協会がその内容を必ずしも保証するものではありません。